EPCOT ADS USERS vol.7 / パーソルテンプスタッフ

ADSの研修は「設計に欠かせない」として、派遣スタッフの提案から始まった
会社概要
社名/パーソルテンプスタッフ株式会社 設立/1973年 5月
代表/代表取締役 木村和成 オフィス/東京都渋谷区
事業内容/労働者派遣事業、有料職業紹介事業 グループ会社数/155社(国内 49社 海外 106社)
https://www.tempstaff.co.jp/

パーソルテンプスタッフ 建設エンジニアリング事業部 建設エンジニア人事室 マネージャー 近藤 広明氏
東京都渋谷区に本社を置くパーソルテンプスタッフ株式会社は、わが国を代表する人材派遣会社の一社である。「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンとする同社は、近年人々の多様な生き方に寄り添い、誰もが自分らしい働き方を実現できるような環境や成長機会を提供することに注力している。そして、そんな同社の取組みを象徴するような展開がこの春あった。建設業界へのCADオペレーター派遣を主力としていたCAD・Creative事業部が、2026年4月に建設エンジニアリング事業部と名称を変えてリスタートしたのである。同部の人事室マネージャーとして勤務している近藤広明氏は語る。
「これまでの当部は、建設業界を顧客にCADオペレーターやBIM/CIMオペレーターの派遣を中心に展開してきました。実際、現在当部を通じて就業中の約2,500名は、そのほとんどがCADオペレーターで、うち約300名がBIM/CIMオペレーターを兼ねているに過ぎません」。しかし、建設業界のフィールドは設計から施工まで広汎な領域に広がり、設計分野に限ってもより高度で多彩な専門技術が求められるようになっている。ところがこうしたニーズの変化に、自分たちは十分応えきれてないと近藤氏は言う。
「──そこで、建設エンジニアリング事業部という新名称のもと、私たちは設計から施工に至る建設業界のあらゆる領域の業務課題を解決できるような専門部隊を目指そうと考えました。いわば建設業界の課題解決パートナーです。そのために私たちはここ数年さまざまな新しいチャレンジを開始しています」。たとえば、BIM/CIMや天空率のような高度かつ専門性の高い設計スキルを持つ人材の育成も、その挑戦の一つである。ソフトが使えるだけのオペレーターではなく、一段高いレベルの設計補佐クラスの人材で新たなニーズに応えていこうというのである。
「こうした人材はとても希少で、従来の“できる人を探して派遣する”やり方は難しいのが現実です。そこで生まれたのが“そのスキルは無いが、意欲ある方を育てて送り出す”育成主体の手法です。今ではBIM/CIMソフト研修と共にADS研修も開催し始めています」。だが、人気のBIM/CIMはともかく、専門性が高く活用場面も限られるADS-winがなぜ選ばれたのか?

ADS研修の練習問題

研修後の復習用の練習問題も準備されている
「天空率とADSの研修を立ち上げたのは、もちろんお客様の声があったからですよ」。そう答えてくれた近藤氏によると、近年、建設系企業に勤務中の派遣スタッフから“ADS-winを使えないか?”とお客様に訊かれたという報告が増えていたのである。そこで、実際に客先の組織設計事務所に派遣されて勤務している山下実那子氏の話を聞いてみた。山下氏の前職はハウスメーカーの設計者であり、当時からADSを駆使して天空率を業務に活用していた。そして、現職へ移ってからは組織設計事務所での勤務と並行してテンプスタッフ社内のADS研修の開発を兼任。現在はさらにADS研修の講師役まで引き受けている。まさに同社きってのADSユーザーなのだ。
「確かに私も客先で“ADSを使える人材”に対するニーズの高さをたびたび感じています。特に設計者の方から“天空率を使いたい、ADSを学びたい”という声をよく聞くのですが、同時に“ADSは怖くて触れない”とおっしゃる方も少なくありません」。これは別にADSのシステムが難しくて操作できないという意味ではない、と山下氏は言う。「実際、ADSの操作自体は本当にシンプルで誰でも直感的に使えますし、他のソフトに比べても操作は決して難しくありません。ただ、これを実務で効果的に使うには別のハードルがあることも確かなのです」(山下氏)。
そのハードルとは何か? 山下氏によれば、一つは天空率と関連法規の知識と理解がADS活用の大前提となっていること。そして、これを学ぼうと思っても、どうやって学べば良いのか分からず、コストや時間もかけ難いと考える人が多かったのだと言う。「ADSを用いたボリュームチェック等の作業は意匠設計の形状に関わる重要なものです。実際、ここを間違えてしまうと後々まで設計全体に響きかねません。“怖い”と感じる人がいるのも分かります」。そんな山下氏の言葉を受けて近藤氏はこう続けた。「しかし、だからこそADSと天空率のスキルが、これほど強く求められているのです。裏返せば、もしこのスキルを修得できればその人の派遣社員としての市場価値は大きく向上するに違いありません」。
こうした議論を経て、生活産業研究所の協力のもと山下氏が中心となって新たなカリキュラムが組まれテキストが作られた。そして、2022年8月、独自のADS研修がスタートしたのである。

ADS研修の様子

PCを2台使い、講師の画面を確認しながら受講できる

「法規」「基本操作」「実践」を1つにした研修を行っている
「ADS研修は2~3カ月に1回のペースで、休日か土曜日に丸一日(10~17時)かけて渋谷オフィスの研修室で開催しています。受講者はその都度募集しますが、たいてい4名前後で既に就業中の方が8割を占めています。就業先はほとんどが建築意匠設計ですね。授業もマンツーマンとまではいきませんが、それに近い形でみっちり行っています」(山下氏)。渋谷オフィス研修室の環境は受講生全員がデュアルモニタを使用。自身の操作画面とは別に講師の操作画面を常時見られるし、逆に講師側も受講生全員の画面を見ることができる。
では、研修自体の内容はどのようなものか? 基本的には山下氏が生活産業研究所と共に編集したテキストに沿って、①法規 ②ADS-winの基本操作 ③実践──という流れで進める。①でADS-winの概要や日影・天空率を中心とする法規のポイントを解説。②ではADS-winの画面操作の基本からデータインポート、敷地・方位・条件、日影・天空図作成。計算結果の確認から申請図レイアウトまで一連の操作をレクチャー。最後に③の練習問題で実際の運用も体感できる。
「基本操作が4割に対して6割は法規の説明をしていますね。実は生活産業研究所にマニュアルの研修動画が豊富に用意されており、操作だけならそれで学ぶこともできるんです……そこで私は“実務で大切なのは何か?”を重視。徹底して実務に沿った内容を心がけています。設計現場で実際に私が犯してしまった失敗や直面した課題もどんどん紹介していますよ」(山下氏)。
こうしてADS研修は2022年8月から2025年12月までで既に19回開講され、計51名の派遣スタッフが受講。受講者からは「実務で使う方法が具体的に知れて良かった」「忘れかけていた関連法規を思い出せた」など、意欲的な感想が数多く届くなど成果も着実に上がりつつある。近藤氏らも取組みをさらに強化していく計画だ。
「最近はお客様からも“ソフトが使える”に加え“ちゃんと知識がある人が欲しい”と言われます。そこで最近は専門知識の研修も計画中ですし、手付かずだった施工領域でも施工管理や施工事務等への対応を検討中です。こうした積み重ねにより、前述の建設業界のトータルな課題解決パートナーを目指していきます」(近藤氏)。

建設エンジニアリング人事室 マネージャー 近藤氏

事務、CADオペレーターだけでなく、設計者、設計アシスタントといった建設専門の人材派遣にも力を入れている
※記載事項は予告なく変更することがございます。予めご了承ください。
※本事例で記載されている内容、部署名、役職は取材時のものです。