EPCOT ADS USERS vol.5 / 佐藤総合計画
会社概要
社名/株式会社佐藤総合計画 創立/1945年10月 代表/代表取締役社長 鉾岩崇
事業内容/一級建築士事務所、建設コンサルタント、ZEBプランナーほか
事業所/東京本社(東京都墨田区)、東北オフィス、関西オフィス、九州オフィスほか
https://www.axscom.jp/
佐藤総合計画は、わが国の建築音響工学の先駆者として知られる建築家 佐藤武夫が創建した一級建築士事務所である。大規模な都市計画から多様な建築設計まで幅広いプロジェクトを手掛け、特に市庁舎や病院、公共図書館、国内外スタジアム等の公共建築分野で強みを発揮。近年は中国での老人福祉施設など、海外プロジェクトも多い。だが、その高度な設計力と豊富なノウハウはもちろん民間分野でも幅広く生かされている。同社の東京第1オフィスにおいてチーフアーキテクトを務めている髙松昌嗣氏は語る。
「私が勤務する東京第1オフィスは公共建築がメインの部署ですが、民間の建築も手掛けています。特に力を入れているのが駅前再開発など都市再開発事業です」。たとえば東京地区に限っても日本橋の「トルナーレ日本橋浜町」や淡路町「WATERRAS」、月島「MID TOWER GRAND」等々、その実績は枚挙に暇が無い。「そして、こうした再開発事業で中核となっている建築物の多くがマンションで、近年はそれも背の高いタワー系が中心となります。そのため設計作業では日影・逆日影はもちろん天空率も頻繁に使います。実際、天空率を使わないと100m超えの建築は難しいのが現実ですから」と言って髙松氏は笑う。さらに近隣説明のためには日影図も必要不可欠だ。無論、ほとんどが商業地域の計画となるので本来必要ないが、たとえば道の向こうが住居地域ならやはり日影も求められる。結果、彼らにとって天空率&日影ソフトのADS-winは、無くてはならない必須ツールとなったのである。では、数ある天空率&日影ソフトからADS-winが選ばれたのは何故だったのか?
「ADS-winの導入は2001年。私が中途入社してきた年のことです。それまで当社は別の日影ソフトを使っていましたが、入社したばかりの私が“ADS-winを使おうよ”と提案し、入れていただきました」。もちろん使い慣れたツールを使いたい思いもあったが、それ以上にADS-winの方が使いやすく、圧倒的に便利に使えるという確信があったからだと髙松氏は言う。
「日影規制のチェックなど、ADS-winなら日影チャートがパッと出てくるので、建物の何処が当たっているのかもすぐ分かります。当時はマンション単体の物件も多く、それでいて天空率の手法が無い時代でしたのでADS-winを本当によく使いました」。業務現場でのCADや日影ソフトの乗り換えは容易に進まないことも多々あるが、この時は髙松氏が普及活動の先頭に立ちADS-winの分かりやすさ・使いやすさをアピールしたこともあり、急速に普及していった。
「実はADS-winが導入されるまで、当社で日影ソフトはあまり使われていませんでした。公共建築物では日影規制が問題になるケースは少なく、日影ソフトを使いこなすどころか苦手としているような人がほとんどでした。でも、ADS-winを導入すると私の周りでは一瞬のうちに広まりました。やはり、操作が簡単で使いやすかったからでしょう」と髙松氏は言う。そして、こうして、あくまで民間建築を中心としながらも、公共建築も含めてADS-winの活用は急速に広がっていったのである。現在、デジタルデザインセンターでBIM担当を務める糸島光洋氏と齋藤崇志氏は以下のように語ってくれた。
「当時、私は意匠設計担当で特に学校を多く設計していました。日影的に厳しい所は少なく日影ソフトもたまに使う程度。そのため間が開くと操作を忘れ、使う度に復習していました。でも、日影ソフトがADS-winに変わると、すぐに使いこなせたのはもちろん、その後は間が空いても操作を忘れるようなことはなくなりました。ADS-winが感覚的に使えるからでしょうか」と糸島氏は言う。一方、齋藤氏はこう語る。「入社時は既にADS-winが普及しており、私も新人研修とは別に操作研修を受けました。しかも髙松をはじめADS-winに詳しい人がいたので、分からない箇所などすぐ質問できたことも大きかったです。主に公共建築を手掛けていた私も頻繁には使いませんでしたが、確認申請に必要な図面等をADS-winで簡単に作れましたしやはり欠かせないツールです」。
このような2人の言葉を聞いて髙松氏は苦笑いした。民間建築の場合は、最初の敷地を起こしたら即座にADS-winに入れて、逆日影を進めることが全ての出発点となる。ADS-winに対する要求度が公共建築とは全く違うのである。
「公共建築ならADS-winを1回使って一気にプランし提案して、プロポーザルが自分たちに決まったら“念のためもう1回入れてみようか?”という程度で終わりです。でも、民間建築ではちょっと変更する度にADS-winを使い、抵触してないか何度も確かめる必要があるわけです」(髙松氏)。つまり、民間建築では設計変更が発生すれば、その度にデータを入れ直して進める。だからこの処理の速さが重要になる。その点、ADS-winは圧倒的にスピーディなのだと言う。「とにかく1度作ってしまえば2度目からチャートも出てくるので一目瞭然。何処を削れば何処がどうなるのかも分かるんです。民間建築の担当は誰もが必要に迫られながら日常的に使っていますよ」。
建築業界を牽引する組織設計事務所の一社として、佐藤総合計画は早い段階からBIMの活用を進めており、着々と実績を積み重ねている。同社のBIMへの今後の取り組みについて、広報戦略室で部長を務める弓崎浩一氏に聞いてみた。
「BIMへの取り組みが本格化したのは約10年前。BIM等の専任部署を設けたのが始まりで、徐々にその人員を増やしながらBIMの普及を進めてきました」。弓崎氏によれば、当初は基本設計や顧客との同意形成等のための3Dツールとして使われていたが、徐々に「BIMデータの活用」が主題となり、いまや実施設計段階での活用が進んでいる。「今では東京本社の新規案件はほとんどBIMを用いており、特殊な例を除き全てで実施設計図面納品までRevitで仕上げています」。もちろんADSについてもいち早くADS-BT for Revitを導入し試用を行なっている。最後にデジタルデザインセンターでBIMを担当している2人に、今後のBIMへの取り組みとADS-BT for Revitへの要望と期待について語っていただこう。
「BIMの場合、最終的には1ファイルで全て完結させたい思いがあります。現状、Revitの実施図モデルデータが重すぎるため、ADS-BT for Revitはなかなかスムーズに活用できずにいますが、ここを改善して日影も含めて全てをRevit内で完結できれば理想的ですね」(糸島氏)。
「私も同意見です。ADS-BT for Revitが重いデータからでもスムーズに計算が流せるようになってくれれば、BIMの普及もより進むのではないでしょうか。“Revitの中で日影もできるよ”と言えれば、BIMのメリットをもっと多くの人に感じてもらえると思います。開発する方は大変だと思いますが、期待したいですね」(齋藤氏)。
※記載事項は予告なく変更することがございます。予めご了承ください。
※本事例で記載されている内容、部署名、役職は取材時のものです。